辞めようとするたびに、頭に浮かぶ言葉がある。「後悔したらどうしよう」。転職を考える繊細な人なら一度は感じたはずのその不安に、正体がある。


人は損を2倍怖がるようにできている——転職の決断を妨げる心理

ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』に示されたプロスペクト理論によると、人は「得ること」より「失うこと」をおよそ2倍強く感じるように設計されている。

つまり「転職して年収が10万円上がる」喜びより、「転職して今の福利厚生を失う」不安のほうが、感情的に大きく感じられる。これを損失回避バイアスという。

「後悔するかも」は未来の話ではない——転職を迷う人が知っておくこと

「後悔するかも」という感情は、未来を正確に予測しているわけじゃない。脳が損失を過大評価しているとき、自動的に生成される感情だ。

今持っているものを手放す怖さが、未来の後悔として現れている。

バイアスを知っても怖さは消えない——それでも転職を考える理由

それでも怖い。正直そうだと思う。私も転職を決めたとき、最後まで怖かった。

ただ、「この怖さはバイアスの影響を受けている」と知っているだけで、少しだけ冷静に判断できる。感情に気づいて、距離を置くための知識だ。


後悔するかもしれない。でも、しないかもしれない。損失回避バイアスは、後者を見えにくくする。